名古屋出身レジェンド・クリエーター「宇野亞喜良」展でアリスの仲間と出会ったよ!

名古屋出身レジェンド・クリエーター「宇野亞喜良」展でアリスの仲間と出会ったよ!

 いかがお過ごしでしょうか?ようやく少し暑さも和らいできましたね。

先日(行った日は暑かった・・・)刈谷市美術館で11月9日(土曜日)まで開催している「宇野亞喜良」展へ行ってきました。

(「刈谷市美術館入口サイン」)

 

これ、絶対おすすめ!といつも書いている気がしますが。。。

なんというか、作品の個性と圧倒的な仕事量に、鑑賞しながら「うわーこりゃすごいわ」と声を漏らしてしまうほどでした。

開催初日に行って本当に良かったと思う展覧会でしたので、内容含めてご紹介していきます。

 

宇野亞喜良さんってどんなひと?

(「珈琲エーデルワイス」のための室内装飾 1954年 ©AQUIRAX UNO

宇野さんの母親が名古屋市中区で喫茶店を営んでいて、お付き合いがあったので制作依頼が来たと考えられています。エーデルワイスはテレビ塔の横にあるお店ですね。)

 

宇野亞喜良さんは、名古屋市生まれ(1934年)の御年90歳のイラストレーター。1950年代から活躍されていて、もちろん今も現役!

手がけた作品は、おそらくどこかで目にしている方も多いと思います。

イラストレーターという言葉、職業を世に広めたかたでもあります。

そして、何がすごいって、仕事の幅です。

イラストレーター、グラフィックデザイナーとして企業のポスターや広告制作はもちろんのこと、布袋寅泰や椎名林檎、SHAKALABITTSなど音楽アーティスト関連、アニメーション、舞台の美術、脚本、絵本の挿絵、短歌にいたるまで、ものすごく仕事の守備範囲が広いのです。

超マニアックなところでは、1973年に英国のロックグループ、ピンクフロイドのレコード付録ポスターなんかも手掛けてらっしゃいます。渋すぎ。

 

こういった幅広い仕事で生まれた作品が、刈谷市美術館の1階2階フロア全部を使って展示されています。私、音楽業界で働いていたことがあるのですが、「え、これも宇野さんだったの!」という作品もあり素直に驚きを隠せませんでした(ハイ、やはり声だしてました)。

 

宇野亞喜良さんの作風は?

ひとつ、刈谷市美術館について触れておくと、この美術館へ行ったことがある割とコアなアートファンならご存じかもしれません。

この刈谷市美術館には、収集作品に特徴があります。

それは、絵本やイラストレーションなどグラフィックデザインの分野の作品を多く収集しているということ。得意分野とでもいいましょうか。

実際に、イラストレーションを中心とした展覧会は作家を変えて何度も開催されています。そして、刈谷市美術館での宇野亞喜良さんの展覧会は、今回で2回目になります(前回は2010年)。

 

担当学芸員さんによると、展覧会実施にあたってなんと10,000点を超える作品と向き合い、厳選した作品群を会場に配置。中には泣く泣く展示から外した作品もあるとか。学芸員さんのご苦労と展示にかける熱い想いがつたわってきました。 

 

会場の構成は、名古屋時代、グラフィックデザイナー宇野亞喜良、絵本・児童書など12のテーマに分けられています。

ですから展示数はかなりあります。

写真撮影は基本OKでした。(一部ダメなものもありましたので注意)

では、宇野亞喜良さんの作風ってどんな感じなのでしょうか。いくつか画像を見ていきましょう。

(「国策パルプ工業」1965年カレンダー9・10月 1965年 ©AQUIRAX UNO)

 

(「Christmas Greetings」(東急百貨店)すごろく1967年 ©AQUIRAX UNO)

 

(「Renaissance Collection」(マックスファクター)ポスター1965年頃 ©AQUIRAX UNO こちらの作品が展覧会のチラシ、図録に使われています。)

 

(絵本「マイマイとナイナイ」原画 2011年 ©AQUIRAX UNO)

 

まず、少女、女性が多いです。

過去のインタビューで宇野亞喜良さんも「女性のファッションや髪型を描くのがすごく楽しいし、普通、男性が気にかけないようなプリーツのひだのディテールなどにもこだわってしまう。自分にはある種の少女期の女性の感性のようなものがあるのかもしれない」とおっしゃっています。

 

かわいさ、クールさ、エロティックさ(アングラ・前衛的)、若干のグロさを持ったイラスト群の数々。

 

なんでしょう。やはり少女や女性の「目」に引き付けらます。そして、登場する彼女たちは、たいてい笑っていない。この辺りは、現代美術家の奈良美智さんとも共通する感覚、表現なのかなと私は思いました。 

 

(「X字架<じゅうじか>」2014年 ©AQUIRAX UNO)

 

ひとつ絵本を紹介しておきます。

この画像は「X字架<じゅうじか>」という絵本の原画の一枚です。なんか気になったのでいくつか図書館をめぐって探し当てました。

文を穂村弘さん、絵を宇野亞喜良さんが担当された2014年の作品です。

主人公は、ドラキュラ。

このドラキュラ、月曜日に新しいガールフレンドができて、火曜日にペペロンチーノを鼻をつまみながら食べ(わかります?ニンニクね)、水、木、金・・・土曜日に2人は大人の・・・最後は日曜日に・・・。

絵本のタイトル「十字架」を「X字架」と書いてますよね。

主人公のドラキュラは、彼女が付けていた十字架の大きなピアスが気になって、首を斜めに傾けて見ると、苦手な「十字架」が「X字架」(Xは10ですよね)に見えることに気が付いたのです。ドラキュラと彼女の関係はどうなっていくのでしょう。

ドラキュラの行動に付き合った彼女は優しいのかな。大人のユーモアにちょっと微笑んでしまいました。

生きていくうえで視点を変えることの大切さという教訓にも思えます。

 

アリスの登場キャラクターと出会った。ここでアリスに繋がるとは・・・

作品は、イラストなどの平面だけではなくて立体作品もありました。

そこで出会ったのです。アリスの登場キャラクターたち。この前までブログで書いていたばかり!

それらは舞台芸術のパートに原画と共に展示されていました。

グリフォン、にせウミガメ、うさぎ、眠りネズミ、そしてチェシャ猫。全部頭にかぶる仮面作品。

いや、まさかここでアリスに繋がるとは思ってもみませんでした。

我ながら引きが強いおじさんだなと。

これらは舞台で使われたもので、原画では仮面だけでなく衣装デザインも描かれていました。

半端なく才能の幅が広い方です。

( タカイズミ プロジェクトVol.1『Over The Rainbow・・・?~アリス的不完全穴ぼこ墜落論~』2008年 グリフォン仮面 ©AQUIRAX UNO

年老いたアリスが主人公。実際の仮面制作では宇野さんも担当。)

 

宇野亞喜良さんの展覧会に行って感じたこと。

長きにわたって第一線で活躍し続けることは、クリエイティブの現場では相当難しいことです。どんどん新しい人材が出てきますからね。

展覧会の図録(カタログ)で、宇野亞喜良さんは、今は俳句をビジュアライズすることにはまっていて、それは松尾芭蕉から自分の俳句までを題材にしている。文字からビジュアルを考えることが好き

ここで思ったのが仕事の幅の広さは、変化、進化だったのかなぁと。

同じ位置にとどまらなかった。

そして何より少女や女性を描くが好き

好きは、原動力

とても重要なことなんだなと改めて感じた展覧会でした。

ぜひ、あなたにもこの展覧会へ足を運んで、素晴らしい作品の数々に出会って何かを感じ取ってもらえたらなぁと思います。

「宇野亞喜良」展は、刈谷市美術館で11月9日(土曜日)まで開催しています。

会場ではグッズも販売されていました。私は図録を購入。ずっしりと読みごたえのあるカタログです。図録が好きな人にはおすすですよ。

気がかりなのは、9月28日に東京で予定されていたトークイベント(刈谷市美術館でも中継予定だった)が体調不良により中止になってしまったこと。ご高齢だけに心配であります。

 

参考資料

・「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」図録 監修 松本育子(刈谷市美術館)、朝日新聞社、2024年

・「仕事場対談 和田誠と27人のイラストレーター」、著者 和田誠、河出書房新社、2001年

・「宇野亞喜良クロニクル」、著者 宇野亞喜良、グラフィック社、2014年

・「宇野亞喜良ファンタジー挿絵の世界」、著者 宇野亞喜良、バイインターナショナル、2016年

・「X字架<じゅうじか>」、文・短歌 穂村弘、絵 宇野亞喜良、芸術新聞社、2014年

 

執筆者

青木 雅司

美術検定1級アートナビゲーター

画像の左上が私です。こういう画像をたまに制作しています。

アクリル絵の具を使ったマーブリングを撮影して、自分で撮った画像と組み合わせています。

昔、大阪と名古屋でラジオ局のディレクターを長いことやってました。

あいちトリエンナーレ2013広報メンバーでした。

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