「眠れない私たちの夜を美しくした5人の女性たち」…中山ラビ、桃井かおり、早瀬友香子、浅川マキ、ZUZU(安井かずみ)

「眠れない私たちの夜を美しくした5人の女性たち」…中山ラビ、桃井かおり、早瀬友香子、浅川マキ、ZUZU(安井かずみ)

あなたは眠れない夜に何をしますか。

私は本を読んだり音楽を聴いたりします。

夜になるとずっと同じ道をぐるぐると徘徊し続けてゴールのない迷路を一生懸命クリアしようとしてしまうので放棄するために「自分以外にも同じような思考を持っている人」と「自分と似た思考から一抜けた人」に出会って視野が狭くならないように思考型と感受性の強さを感じる女性の歌を聴きます。

私はかなり「女性的」な人間であり女である事を長所に感じている女の中のオンナなので、「男」と「女」にまつわる歌を多く輩出した女性たちの様々な視点に触れることにより一筋縄ではいかない女性の魅力を感じられる歌手たちを紹介させて頂きます。


【中山ラビ「会えば最高」】

______人が人を愛するなんてとても頼りない なんの特にもなりゃしない(「困った女」より)

 

形容できない暗闇が訪れた時に寄り添ってくれた一枚です。

私の中で心底愛したいと思ったフォークソングを歌うのは中山ラビさんだけです。

よしだたくろうは愛していない。愛でているけれど。

マンネリ化した悩みが吐き捨てたガムのように薄く広がって擦れてしばらく脳内に張り付いている時って悩みの種を言葉にしたくないぐらい自分に対してもうんざりしていて中々根っこから立ち直れないのですが、中山ラビの音楽は「言わなくてもあなたの気持ちは分かってるよ」と言ってくれている気がして好きなんですよね。

ラビさんの歌は母性は押しの弱さや諦めじゃなくて女のカッコ良さであると言ってくれているようで少し大人になった今だからこそ大好きな音楽であると感じてます。

十代の私には分からなかった魅力が心底分かったと感じた存在なので外せない一枚です。

もう「死にたい」や「愛されたい」じゃ気が済まないぐらいそんな夜を繰り返した人の灯です

客観視を歌にする方だと私は思っているのですが「困った女」は特に客観的であり退屈な日々を音にしたようなイントロが素晴らしく、「どこのだれですか」は母性を強く感じられてこの2曲が特にお気に入りです

中山ラビ「会えば最高」


 

【桃井かおり「嫌なことを言われたの」】

______男の人っていいもんね あなたに会ってからなのよ 優しい女になれたのは(「嫌なことを言われたの」より)

桃井かおりさんの事は元々女優さんとして好きだったのですが、初めてこの曲を聴いた時に作詞の才能と歌声に人生の深みや色っぽさが表れているのを感じて一人の歌手としてもとても好きになりました。人間味溢れる雰囲気が歌にまで行き届いています。

大衆の気持ちを代弁しようとし過ぎず歌い手の思考や人生がよく表れている歌が好きな私からすると桃井かおりさんの歌は彼女自身の人生を想像させてくれる歌が沢山あるので、アルバムを通して聴くととても楽しいです。

「TWO」というアルバムにもこの曲が収録されているので是非聴いてみてください。

他にも「たばこ止めないの」「うんと年下の彼」という曲も大好きでドラマティックで女性の強さと繊細さが紙一重であると分からせてくれる作詞の才能に心底惚れ込んで崇拝しております。

私自身「女っぽくて強そう」という印象を持たれる事が多いのですがそれはたかが一面に過ぎなくて基盤はとても脆く非常に感受性が強いのですが、中々そんな気持ちを吐き出したり理解してくれる場面がないので桃井かおりさんの歌は私を抱きしめてくれるようで愛しております。

女の強さと弱さと色気は全て因果関係があるとこれからも世の坊やに分からせていってほしい存在です。

桃井かおり「嫌なことを言われたの」


【早瀬友香子「躁鬱」(アルバム)】

______本当の気持ち他の人に見せたくない 分裂気味の二重人格演じていたい(「サディスト」より)

近年ネットアイドル、自殺日記がSNSの普及により自撮り界隈やメンヘラ界隈と名を変えもてメンヘラブームがが再熱した事により病んでいるコンテンツが身近になりましたが、若い時からSNSに触れる事によりSNSがない世界線で生きるよりもかなり色々な情報や考え方を目にして客観的、多面的を通り越して心労を起こす人々が増えていると感じました。

こんな世の中にご意見がない方がおかしいという考えも理解できますがそのご意見が溢れ過ぎて自分の容姿も性格も人生も何が正しいのか分からなくなっていてリストカットやオーバードーズをするまでいかないけれど沈んだ気持ちになるという方も多いと思います。世の中が鬱気味だから鬱っぽいコンテンツを求めて寄り添ってもらう事によりメンヘラがファッション化して自分のアイコン化する傾向もよく見受けられます。

「安っぽいのは間に合ってる」と早瀬友香子が歌うようにそんな方に聴いてほしい「病んだ世の中で病んだフリをして病んだわけじゃない」心を表す一枚「躁鬱」です。このアルバムはほとんど秋元康氏が作詞しており少女、少年、女性の人生を憑依して筆を走らせる事ができる彼だからこそ成立した大変素敵なアルバムです。

こちらに収録されている「サディスト」は本音で生きていかなくてはならないわけではなく、女には母性同様サドが眠っていますが愛嬌や母性を求められる事が多い中で「女だから」から始まる言葉に基づいていかなくてはならない訳ではなく、誰にだって意地悪な心が潜んでいるという歌で非常に人間味があって大好きです。

「サルトルで眠れない」は周りに否定される恋人であっても自分が愛しているならそれで良いし、「水曜日までに死にたいの」はリストカットや飛び降りたりする勇気はないが生き急いでいるから死にたいし、「セシルはセシル」は同性に対するジェラシーとリスペクトの表裏一体な気持ちを持っているけれど自分も他人は他人で自分は自分だと分かっているが恋愛で失敗をすると最後にはなんだかんだ自分を責めちゃうし

一筋縄ではいかない善悪が入り混じる人生に対して非常に正直なアルバムであり耳心地が良くて小悪魔な色気や可愛さや歌声の甘さの中にダウナーが顔を出す雰囲気が私たちの眠れない夜にはもってこいです。

私たちは「人生」だから病んだのです。

早瀬友香子「躁鬱」(アルバム)


【浅川マキ「あたしが娼婦になったら」】

______ わたしが娼婦になったなら大きな石鹸 買って置く  好きな男を 洗うために(「あたしが娼婦になったら」より)

私は浅川マキさんの書く歌詞は男前でさっぱりしていると感じます。

一方で寺山修司氏が浅川マキさんに提供する歌詞はある意味男性の理想なのか浅川マキさんへのイメージなのか、愛情深くて男性に尽くす孤独な女性像が描かれていると感じました。

私は寺山修司氏の歌詞にとても共感して浅川マキさんに魅入られた人間なのですが、かの有名な「かもめ」という曲も彼が作詞したので私以外にも同じような方はいらっしゃるんじゃないかと思います。

浅川マキさんの歌の登場人物がどれも愛おしく「かもめ」も「花いちもんめ」も男女で立場が逆になって対になっているように聴こえますが別々のタイプではあれど、どこか心が空っぽな女性であるという共通点に凄く心惹かれて寄り添ってもらいました。

今回取り上げるのは「あたしが娼婦になったら」という寺山修司氏作詞の曲です。

「わたしが娼婦になったなら

大きな石鹸 買って置く
好きな男を 洗うために」

というフレーズが非常に愛情深く母性すら感じさせますがギラリとオンナがどこかで鋭く光る感じが堪らなく好きです。

何もかもが嫌になって生まれ変わりたい夜に女性であるからこその良さをまた一つ覚えて何とか明日を迎えられる為に彼女の存在は永遠に必要です。

浅川マキ「あたしが娼婦になったら」


【ZUZU(安井かずみ)「今日までのこと」】

______死にたいと思いつめた日も 幸せをかみしめた日も わかっているの いろんなことが生きてゆくとあるものなの こんな私にも(「今日までのこと」より)

彼女は作詞家として非常に有名な方で、歌謡曲を作詞するのに疲弊した時期もあったそうなので全ての曲にどれだけ彼女の意思が反映されているのか計り知れませんが、歌手ZUZUとしての安井かずみ本人の歌と提供曲を照らし合わせると基本的には男と女の分かり合えない切なさや女性が客観的で全てを理解していてそれでも男性を愛するという母性と優しさが理解されずに終わりを告げる恋をちゃんと描いてくれて好きです。

提供曲の中では小林麻美さんの曲がどれもイチオシです。

女性は大人になるにつれてこの傾向が特に顕著になっていく方が多いと思うのですが、自己に対しても他者に対しても客観視が得意で口調や表情になるべく優しさや気遣いを添える方が多いと感じます。

そういう方こそ母性が首を絞めてまだまだ青い恋人にとことん寄り添ってしまい、なんだかんだ言いながら最後に優しさまで残していく方も多いと思います。

男性は大人になっても少年性を携えたり母性に寝転がりたがったりする方が多いのだからそんなあなたを許して譲って愛する女性を簡単に「ダメ男好き」なんて言わないで。

「今日までのこと」はそんな自分もそんなあなたもそんな世間も振り返ってみた全ての良し悪しも分かっているけれど考えたって仕方がない時の歌だと思っているのですが、前を向いてとも笑ってとも泣いてとも何かしようとも言わないでいてくれる、思考型の夜に対するZUZUの代弁に感動しました。

愛する事はうんと優しく大人になることでもあり、今までにないぐらい意地悪になることでもあるという事をZUZUは否定しないのです。そういうものだと言うだけなのです。

愛は生死が表裏一体であり生死を彷徨う生き物です。

晩年は加藤和彦の妻としてこの世を旅立ちましたが「彼女は男の腕の中が幸せなタイプであろう」と周りが証言していたり加藤氏との幸せな結婚生活を知ってしまうとその後の加藤和彦の行動に非常に苦しみを感じてしまいますが、安井かずみが遺した歌詞は彼女の優しさであると私は思っていて非常に抱きしめたい気持ちにもなりますが私たちのどんな夜も必ず言葉にしてくれているので彼女に出会えたという事はもう一人で泣かなくて良いという事なのです。

ぽつりぽつりと呟くように繊細な歌声は誰かの日記を見ているような人間味があります

ZUZUの「ZUZU」というアルバムはZUZU自身の愛の結晶であり優しさです

ZUZU(安井かずみ)「今日までのこと」

 

私自身もローストチェリーマーケット、ミレディ♡チャームで作詞をしておりますが、常に誰かの夜を思って書いているので眠れないあなたの枕元に私の歌があると良いなと思っております


私は幸せな時や楽しい時は強く音楽を欲さず、思考回路が張り巡らされて眠れない夜や渇望している時に強く音楽を欲するのでこれからも誰かの人生の1ページを書き続けていこうと思います

 

執筆者 赤城文(あかぎ・あや)

 

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